賃貸用不動産の立ち退き請求 不動産の立ち退き問題に悩むオーナー様へ

コラム1 立ち退いてもらう正当な理由。それが正当事由。

自ら所有している土地や家屋、マンションであっても、そこを利用する借主(借家人)がいる以上、立退きにはそれなりの理由が必要になります。
先立って記述したとおり、立退き請求は「貸主(家主)の正当事由」と「借主(借地人や借家人など)の不都合」を比較することで立退き請求が認められるかどうかが決まります。

ケーススタディ
状況ごとに「正当な事由」として判断されるかどうかを解説いたします。

ケース1:「この家に住みたい」場合
比較的よく見られる「正当事由」とは、貸主(家主)本人がその家や土地に住まわざるをえない事情が生じ、なおかつ他に住居を持っていないというケースです。「長い転勤からやっと、貸している持ち家がある地域に戻ることができた」などがこれに当たり、比較的よく見られます。また、貸主(家主)自身が現在住んでいる家の立退きを求められたり、災害などにより現在住んでいる家を失ってしまい、人に貸している持ち家に戻らざるえない状況も考えられます。

貸主(家主)本人だけでなく、例えば貸主(家主)の家族や親せきが住む予定ができたケースもあります。貸主(家主)の子供が結婚し、家族で住めるような家が必要だというケース等がこれに当たります。

どちらのケースにせよ、「将来的に必要だと思われる」程度の事情では「正当事由」としては弱くなります。具体的に差し迫った予定があればより強い「正当事由」と言えるでしょう。逆に、他に住むことができる家を貸主が所有している場合も、「正当事由」としては弱くなってしまいますのでご注意ください。
ケース2:「この物件で商売を営みたい」場合
店舗に対して立退き請求が行われるケースは、貸主(家主)が当初必要としなかった営業用店舗が、業績の向上とともに必要になった、というのが典型的な例です。ただ、事業の拡大のためという理由は、「他に営業を行う店舗がない」という事情よりは必要性を低く見られてしまうことでしょう。
また、立退きを求めている物件が現在営業中の物件であれば、もちろん借主(借家人)もそこで営業をしている訳ですから、借主(借家人)にとって立退き請求による不都合が大きく、立退料で補完すべき「正当事由」の度合いは大きいと思われます。
しかし事業拡大が目的ではなく、対象となる店舗が、立退きを求めている貸主(家主)にとって、他に代わりのない店舗である差し迫った事情があれば、「正当事由」としては強いと判断されるでしょう。
ケース3:「大規模な修繕、もしくは建て替えの必要性がある」場合
賃貸借契約を結んでいる物件の老朽化が進んで大規模な修繕、もしくは建て替えなどを行わなければならない場合などがこのケースになります。
実際、耐震基準を満たしておらず、行政から勧告等を受けることによって建て替えを迫られているような物件であれば、地震などの自然災害が発生したときに、貸主(家主)が所有者として損害賠償義務を負う可能性があることを考慮すると、相応の立退料を支払う形での立退きや、場合によっては立退料の支払い無しでの立退きが認められることも考えられます。
ケース4:「貸主(家主)に不可避な事情が存在する」場合
仮に貸主(家主)側にその物件を処分せざる得ない事情があった場合も、「正当事由」として考慮されます。例えば、経済上の理由から当該物権を維持していくことが難しくなった場合などがこれに当たります。

立退料がそもそも不要な理由とは?

借主(借家人)がお互いの信頼関係を壊すほどの債務不履行を行っていれば、債務不履行解除となり、貸主(家主)の「正当事由」は不要で、立退料の問題は生じません。
具体的に言えば

  • 家賃を支払わない
  • 契約時と違う用途で家屋や土地を使用している

などがこれに当たります。

ただ、家賃を支払わないといっても程度によるのが実情であり、仮に「1度だけ指定日より3日遅れた」というのが、立退きを求めることのできる債務不履行なのか、というとそうでもありません。債務不履行解除は「貸主(家主)・借主(借家人)間の信頼関係を壊す程度」になってはじめて認められる、という点は注意が必要です。

<判例で解説!>

判例:債務不履行解除か、正当事由(立退料)が必要な更新拒絶か、が争われた不要のケース

東京地判平成9年(ワ)2063号 平10・5・12判決

当該物件情報
鉄筋コンクリート造五階建 事務所共同住宅
(一階は事務所4室。二階から五階は各九室の共同住宅)
平成7年7月506号室の賃貸借契約を締結。
期間2年間、賃料月8万円・共益費用3,605円。
特約
(一)賃借人は騒音をたてたり風紀を乱すなど近隣の迷惑になる一切の行為をしてはいけない。
(二)賃借人が契約条項に違反した時、賃借人またはその同居人の行為が建物内の共同生活の秩序を乱すものと認められた時は、賃借人は無催告解除できる。
通知方法
平成8年12月、賃貸人が特約(一)違反と、特約(二)を理由に契約解除を通知し、予備的に更新拒絶を通知した。
貸主側の正当事由
賃借人とその同居人が近隣(左右・下)住民に対して、音がうるさい等執拗に抗議。抗議方法は壁を叩く等、共同生活の秩序を乱すほどで、隣室の住民が退去。入居者を募集しても未だ埋まることはなく空室の状態。賃料相当額の損害を被り続けている。
賃借人側の言い分
近隣から発生される騒音は忍耐の限度を超えており、我慢を重ねたものの耐えかねて抗議に至ったものであると主張。
判決
共同生活において賃借人の行動は秩序を乱す行為に該当するとして、 賃貸借条項違反を理由とする契約解除が認められ、正当事由の有無は問題にならず、立退料は不要。
裁判所は騒音の度合に関して社会生活上許容できる範囲のものであったと認定。逆に賃借人の抗議行動は近隣住人の迷惑となり、またその行動が原因で空室が続くことで経済的損失を受けている賃貸人と、賃借人の間の信頼関係を破損する行為と位置づけた。

どの程度の不履行が「信頼関係を壊す」程度なのかは状況により異なりますので、みお綜合法律事務所の弁護士までご相談ください。