法人向け法律サービス不動産問題

不動産トラブルを弁護士に相談するメリット

 企業経営に不動産取引は切っても切り離すことはできません。このように書くと,「うちの会社は不動産業ではないから大丈夫」と思われる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。

 たしかに,不動産取引というと,工場用地として土地を買う,購入した収益物件を賃貸に出す,など比較的大きな規模の取引を想起されるかもしれません。

 しかし,不動産取引は,会社の事務所を借りる,倉庫を借りるといった不動産賃貸借は欠かすことができないでしょう。 そうすると,事務所を借りるときの契約書に不安な条項がある,という場面も考えられます。そんなときに弁護士に相談することで不安を解消し,安心して契約をすることができます。

 また,不動産を所有して賃貸している不動産オーナーにとっては,地代や家賃の回収,老朽化した不動産の建て替え,入居者による事故などトラブルは避けられないでしょう。

 このような不動産トラブルについて弁護士に相談するメリットは,「迅速な初期対応」の一言に尽きると思います。

 賃料滞納の場面を例にとってみると,初期対応が遅くなれば遅くなるほど滞納された賃料の額は大きくなりますし,場合によっては賃借人の所在がわからなくなってしまうことすらあるかもしれません。また,賃料不払いを理由に債務不履行解除しても,賃貸人が強制的に賃借人を追い出すことはできないので,裁判所による強制執行の手続によらなければならず,時間も費用もかかってしまいます。

 このような不動産トラブルについて弁護士に相談することで,たとえば,賃料を滞納している賃借人と交渉することで早期の自主的な明け渡しが実現できれば,訴訟費用や明け渡し費用を負担せず,できる限りリスクを減らすことができます。

 当事務所では,不動産売買契約書,不動産賃貸契約書のチェックはもちろん,不動産取引に関する様々な事案の取り扱い実績がございますので,お困りのことがございましたらぜひご相談ください。

賃料回収

不動産オーナーなど賃貸人の方からのご相談で最も多いのが賃料不払いの問題です。賃料不払いといっても,ほとんどが6ヶ月から1年くらいの不払い,なかには5年間というケースもあります。長期間不払いのケースでも,数か月滞納しては,2ヶ月分まとめて払ったり,そのあとまた滞納して・・・と賃貸人としてもなかなかアクションを起こせずに滞納賃料が嵩んでいくケースが多いように思われます。

 賃料の支払は賃借人が果たすべきもっとも基本的な義務です。

 賃貸人としては,賃料不払いがあれば直ちに電話やメール,文書で一定の期限を設けて支払いを促すことが必要です。これを「催告」といいます。催告せずに解除できるとの条項があったとしても催告の手続は踏まえたほうが無難です。

 それでも期限内に賃料を支払わない場合は賃料滞納という債務不履行を理由に契約解除の通知を内容証明郵便で送ることになります。

 賃料の不払いが何ヶ月あれば,滞納賃料がどの程度になれば解除できるのか明確な基準はありません。賃料滞納によって,賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されているかどうかがポイントになります。

 ご相談のあったケースには,弁護士からの催告によって賃料滞納の重大さに気づいたのか通常の家賃と一緒に滞納分を分割で支払うことで賃貸人と合意をしてそのまま契約継続したケース,弁護士からの契約解除通知に従って任意で明渡ができた事例,任意に明渡しなかったことから裁判で建物明渡を求め賃借人に対して明渡を命じる判決を出してもらった事例など様々です。

賃料不払いの問題は,時間が解決してくれることはありません。なるべく早く対処することが賃貸人の損害を最小限に食い止める方法です。

立ち退き・明け渡し

賃料を滞納して任意の明渡にも応じない賃借人をはじめ,近隣住民に迷惑をかける問題の多い賃借人の賃貸借契約を契約解除して退去してもらいたいというケースも少なくありません。

賃料不払いや用法遵守義務違反を理由に内容証明郵便にて催告しても賃借人が任意の明渡に応じなかった場合には,裁判所に建物明渡と明渡までの使用料相当の損害金を請求する訴訟を提起します。賃料を滞納したり,用法遵守義務違反があるといえども,賃借人の同意を得ずに勝手に鍵をかえて追い出す,居室内の動産を勝手に処分することはできません(自力救済の禁止)。そのため,賃借人が任意の明渡に応じないと,このケースのように多くの時間と費用がかかるのです。

明渡を命じる判決に基づいて強制執行するには,強制執行を許可する執行文と,判決が賃借人に送達されたことを証明する送達証明を裁判所から付与してもらい,強制執行の申立を裁判所に行います(民事執行法25条)。

申立がされたら,執行裁判所はまずは,強制執行を実行する日までに任意で建物を明け渡すように明渡催告を行います(民事執行法168条の2第1項)。

明渡催告にもかかわらず建物を明け渡さない場合は,執行官が立ち合いのもと,専門業者がカギを開錠,家具や荷物を強制的に運びだします。これを「断行」といいます。これらの搬出にかかる費用(一般的に30万円~50万円程度)は,強制執行を申し立てた者が負担します。

 反対に,賃借人に賃料不払いや用法遵守義務違反がない場合の立ち退き,明け渡しはどうでしょうか。契約期間が満了すれば契約は終了するのが原則ですが,借地借家法では賃借人保護のため,契約期間の満了により契約の終了する,つまり賃貸人が更新を拒絶するためには,

・期間満了前1年前から6か月前までに更新拒絶の意思を表示する

ことに加えて,

・正当事由

が必要とされています(借地借家法26条1項,同28条)。

 これらの規定は当事者間の合意でも排除できない強行規定ですので,期間満了で契約更新しないという特約は無効になるので注意が必要です。

 ここでいう「正当事由」は,賃貸人または賃借人が建物を使用する必要性,賃貸借に関するこれまでの経過,建物の利用状況,建物の現況(損傷の有無,老朽化の程度),立退料の有無・金額によって個別に判断されます。

 したがって,立退料さえ払えば賃借人を追い出せるわけではありませんし,立退きのためには必ず立退料が不可欠というわけでもありません。

 このように立ち退き,明け渡しに関するトラブルについては,賃借人の債務不履行の有無によってケースバイケースと言わざるを得ません。

当事務所では賃借人の賃料不払いや用法遵守義務違反があるケース,ないケース,それぞれ多くの解決事例がございますので,お困りのことがございましたらぜひご相談ください。

不動産売買契約書

不動産売買契約については,2020年4月施行予定の改正民法の影響が考えられます。そこで,まず,契約不適合責任について解説していきたいと思います。

【契約不適合責任とは】

 物(目的物)に関する担保責任に関して,現行民法では,瑕疵担保責任(民法570条)と数量不足・一部滅失(民法565条)とに分けて規定されていました。

 売主の瑕疵担保責任について,目的物に「隠れた瑕疵」があった場合,買主がこれを知らず,かつ,契約の目的を達することができないときに契約の解除ができる,解除ができないときは損害賠償請求ができるとされていました。

 不動産のように,この世にひとつしかないもの(特定物)は,売主が買主に引き渡しさえすれば契約は履行されたといえ,債務不履行責任は生じないと考えられます(いわゆる「特定物ドグマ」)。

しかし,目的物に隠れた瑕疵があって,あとから瑕疵が判明したような場合には,代金の決め方や額そのものが変わったかもしれませんし,契約の目的を達することができなかったかもしれません。

 そこで,売主は債務不履行責任は負わないとしても,買主の信頼を保護するために故意や過失がなくても瑕疵担保責任を負うという,法定責任説が採られていました。

 ところが,今回の民法改正で,この法定責任説から,担保責任の性格を債務不履行の特則と考える,契約責任説(債務不履行責任説)へ大きくルールが変更されました。

 すなわち,改正民法562条1項では,

 「引き渡された目的物が種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは」

というように契約不適合責任という概念が採用されました。

これは,目的物が特定物か不特定物かで区別せず,目的物が契約内容に適合していないことに対する責任を認めたものです。

このように,法定責任説から契約責任説へ大幅な転換が図られた結果,買主保護の手段についても大きく変更されることになりました。

現行民法の瑕疵担保責任と改正民法の契約不適合責任とを比較すると以下の表のとおりになります。

 

現行民法 改正民法
法的性質 法定責任説 契約責任説
対象 隠れた瑕疵

(570条)

種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの

(改正562条1項)

解除 契約の目的を達成できない場合に限定される 相当の期間を定めた催告の上,解除できる

ただし,不履行が社会通念に照らして軽微な場合は解除できない

(改正546条,改正541条)

損害賠償請求 売主に故意・過失がなくても請求できる 売主の帰責事由が必要
追完請求 請求できない 請求できる

ただし,買主の責めに帰すべき事由があるときは請求できない

(改正562条)

代金減額請求 請求できない(数量指示売買をのぞく) 履行追完の催告の上,追完がないときは減額請求できる
(改正563条1項)
期間制限 買主が瑕疵の存在を知ってから1年以内(除斥期間) 買主が不適合を知ってから1年以内に不適合の事実を通知する

(改正566条)

【不動産売買における契約不適合責任について】

①「契約の内容」に適合するか適合しないかの判断は?

 現行民法の「隠れた瑕疵」から改正民法の「契約不適合責任」に変更した趣旨は,瑕疵の有無を客観的に判断するのみならず,契約をした動機や目的など契約の趣旨を踏まえて判断しようというものです。なお,民法改正の経過においても「契約の趣旨」という文言が採用されていました(中間試案54頁)。

 したがって,契約の内容に適合するかどうかの判断については,これらの契約の目的や動機も含まれるように売買契約書や重要事項説明書に明記しておくことが必要と思われます。

 

②不動産売買における追完請求の内容は?

 現行民法では不動産の売買で契約当時から雨漏りがあったとしても買主は売主に対して修補請求はできませんでした。

 ところが,改正民法で不動産売買においても,買主の追完請求権が認められたので,その分,売主の負担は大きくなったといえます。

 そこで,不動産売買契約においては,買主による追完請求権を行使する際の追完方法,追完の範囲についてあらかじめ売買契約書において具体的に定めておくことが必要になると思われます。

 

③不動産売買における代金減額請求の方法は?

 改正民法で,買主は,相当の期間を定めて履行の追完を催告し,その期間内に履行の追完がないときは,不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができることになりました(改正民法563条1項)。

 もっとも,代金をいくら減額すべきなのか,具体的方法までは規定されていません。

 そのため,代金減額請求をするとき,減額請求をされたとき,適切な減額かどうかが争いになることが予想されます。

 したがって,減額の算定方法に争いが生じないように,売買契約書で減額の算定方法や算定基準について明記して多くことが必要と思われます。

 

不動産売買におけるトラブルを予防し,不測の損害が発生することを防ぐためにも,改正民法の内容を踏まえた不動産売買契約書のチェックと見直しが必要になります。

 当事務所では,民法の改正を見据えた不動産売買契約書のチェックが可能です,お困りのことがございましたらぜひご相談ください。

不動産賃貸契約書

 不動産賃貸借契約は借りる側,貸す側,どちらの相談も非常に多いです。

借りる側にとっては,契約上不利な条項がないかどうか,事前に確認しておくことが重要です。

貸す側にとっては,2020年4月施行予定の民法改正を視野に入れておくことが重要です。不動産賃貸借への影響のうち,保証人に関する改正は,新設される規定も多く,重要な改正点が多いので注意が必要です。

【個人が保証人になる場合の保証人保護】

 平成29年の民法(債権法)改正では,貸金債務に限らず,一定の範囲で生じる不特定の債務の個人保証(個人根保証)まで範囲を拡大して個人保証人を保護することになりました。

不動産賃貸借契約において,個人が賃借人の保証人になることは,将来の未払い家賃や用法遵守義務違反による損害賠償など不特定の債務を保証することになるので上記の個人根保証に該当します。

そのため,賃貸人は保証契約にあたり賃借人の保証人が負担する最大限の金額である「極度額」を書面や電磁的記録で定めておかなければ保証契約は無効となります(改正民法465条の2)。

なお,いわゆる保証会社のような法人が借主の保証人になる場合には極度額の定めは不要です。なぜなら,保証会社が保証人になるかどうかは借主の経済的信用を評価したうえでの経営判断になるからです。

【極度額の定め方】

賃借人の保証人が負担する最大限の金額である極度額について,改正民法(債権法)では文言上明らかにされていませんが,具体的に「〇〇円」と定めるべきと解されています。具体的な金額を定めておかなければ,借主の保証人が負担する最大限の金額を予測できないからです。

しかし,貸主の立場からすれば,賃借人の未払い家賃やそれに対する遅延損害金,用法遵守義務違反があった場合の損害賠償など,将来保証人に請求せざるを得なくなる具体的金額を定めることは容易ではありません。かといって,極度額を少なく見積もると保証人から十分に回収できなくなるおそれもあります。

では,例えば,一般的なアパートやマンションの一室の賃貸借契約において,極度額を「1億円」と設定することはどうでしょうか。

極度額の上限を定めた規定もありませんが,あまりに過大な極度額を定めることは実質的に極度額を定めていないのと変わりません。

そのため,このように過大な極度額を設定することは公序良俗に反し無効とされる可能性がありますので注意が必要です。なお,この場合,保証契約が無効になりますので,貸主は借主の保証人に対して一切請求できなくなります。

【保証範囲の確定】

個人根保証契約において主たる債務の元本が確定するのは以下の場合とされました(改正民法465条の4)。

①保証人の財産に対して強制執行などの申立がされたとき

保証人がすでに経済的に追い込まれた状況にあることから,個人保証人保護のため元本が確定するとされました。

②保証人が破産手続開始決定を受けたとき

破産手続において保証人の負債を確定する必要がありますし,保証債務の履行が期待できないので元本が確定します。

これに対して,賃借人が破産しても賃料の滞納がない限り賃貸借契約は続きますので元本が確定することはありません。

③賃借人または保証人が死亡したとき

個人根保証契約は賃借人と保証人との信頼関係に基づくものであり,賃借人の相続人と保証人との間での信頼関係は希薄であることが多いでしょう。そこで,賃借人が死亡した場合には元本が確定されるとされました。

【財産状況の説明】

事業のために賃貸借契約を締結する,その賃貸借契約に個人保証人をつける場合には賃借人は下記の事項について保証人に説明する義務を負うとされました(改正民法465条の10)。

①賃借人の財産及び収支の状況

②主債務以外に負担している債務の有無,額,履行状況

③主債務の担保として提供しているものの内容

 賃貸人の立場で注意が必要なのは,賃貸人が賃借人の保証人に対する説明が虚偽であることを知ることができたとき個人保証人は保証契約を取り消しできるとされた点です(同条2項)。

 賃貸人としては,取り消し予防のために,賃貸借契約書には,賃借人による保証人に対する財産状況の説明内容を明記し,賃借人と保証人に確認してもらうことが必要です。

【履行状況の説明】

保証人から賃借人の賃料支払状況について問い合わせがあった場合,賃貸人としてはどのように対応すべきでしょうか。個人情報であることを理由に回答を拒否できるのでしょうか。

この点,改正民法458条の2では,賃貸人は賃借人の賃料支払状況及び滞納状況について説明する義務を負うとされました。この場合の保証人は法人,個人を問いません。この情報提供義務に違反したことによる罰則は規定されていませんが,家賃滞納の情報を提供しなかったことで保証人の損害が拡大した場合には損害賠償の問題になる可能性はありますので注意が必要です。

 このように不動産賃貸借契約書といっても将来の法律改正を踏まえて慎重に検討すべきでしょう。

 当事務所では,民法の改正を見据えた不動産賃貸借契約書のチェックが可能です,お困りのことがございましたらぜひご相談ください。

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